地理学科の内容

地理学はじつは文系でも理系でもありません。あえて言えば、人文科学・社会科学・自然科学にまたがる総合的な科学です。

地理学の守備範囲はとにかく広い。なにしろ自然や社会を形づくるもろもろの要素をとりだして、そのあとに地理学をつけると、そこに○○地理学がなりたつのですから。たとえば交通地理学、農業地理学、水文地理学というように…。

「地理学と哲学は諸科学の母」という表現が聞かれます。現在の諸科学はこの2つの学問から分化・派生して形成されてきたものです。20世紀を通して学問分野はますます細分化し精密化してきましたが、その一方で現代では地球環境問題や南北問題のように、諸科学が力を合わせてとりくまなければならない新しい問題群が重要になっています。

科学の近代化・細分化の結果は、枝葉を見て木を知らず、木を見て森を知らないという問題を生んでしまいました。地球温暖化や食糧問題などは諸科学の協力と協同で立ち向かうことが大切です。いまこそ地理学が地理的総合という視点から多くの問題解決に大きな役割を果たす時代といえましょう。

文化・歴史系の地理学とは?

学問マップでは地理学の分野は大きく3つのグループにわかれていますが、地理的視点(地理的な見方・考え方)を共通に「地域」という場を通していろいろな事象を研究する「ひとつのファミリー」を構成しています。

そのうち文化・歴史系の地理学には、文化地理学・歴史地理学・観光地理学・言語地理学・民族地理学などが含まれており、人文諸科学と密接な連携をとりながら、多様な研究対象を地理的視点からひとまとめにしています。

文化地理学とは?

文化地理学は、私たち人間が地表で生活する(した)結果として形づくられる「文化景観」について研究し、それを通じて「文化」とは何かを考える分野です。かつては「文化」といえば伝統芸能とか、言語・宗教・民族といった精神文化が思い浮かべられたのですが、現在ではむしろ日常生活における政治的社会的経済的な現象と関わりが深いものとして認識されています。 

歴史地理学とは?

歴史地理学はある歴史時代における地域の特徴を地理学的に研究する分野で、歴史学と地理学の双方から研究されています。江戸時代の宿場町と周辺農村の関係とか、「塩の道」と塩問屋の役割とか、古記録から景観を復原する研究、はたまた赤穂義士討ち入りの日の天気などじつに幅広い問題がとりあげられます。宗教や産業技術の伝播の地域性といった角度からの研究もあります。

観光地理学とは?

観光地理学は地理学でも新しい分野で、余暇の活用やツーリズムが盛んな先進国を中心に急速に発達してきました。日本には古くから農閑期を利用した湯治の伝統がありました。歴史的都市や優れた自然景観をめぐる観光などに加えて、温泉観光地や近年はリゾート開発や過疎地の地域振興、さらに緑豊かな自然の中で長期滞在型の新しいツーリズムが注目されています。

社会・経済系の地理学とは?

社会・経済系の地理学とは経済・社会・都市・人口など主に社会科学に属する社会現象を地理学的に研究する分野といえます。この分野の地理学は社会科学に属し、他の社会科学との交流が盛んに行われています。

社会地理学とは何か?

一般にはさまざまな社会現象を空間的な観点から研究する地理学の一部門ですが、人間とその環境との関係を考える分野もあります。近年では人間社会の福祉・厚生面について多くの研究が進められていて、民族間・社会集団間・男女間・地域間の格差や差別を地理学的に検討する傾向も有力になっています。多くの地理学者の関心を集めている古くて新しい分野です。

経済地理学とは何か?

経済地理学は経済現象の地理的配置を説明し、経済地域のなりたち、しくみ、役割などを研究する分野です。農業や工業のようなモノをつくる産業を中心に研究する産業地理学、モノを運んだり販売したりするサービス業、金融・情報・流通など第3次産業の地理学などがあります。経済のグローバル化や情報化の進展で地球社会が小さくなってきた印象がありますが、一方でローカルな地域経済や小さな経済主体(家庭・地域社会)の役割もいっそう重要になってきます。

都市地理学とは何か?

都市や都市地域を対象にした人文地理学の一分野です。都市のもっている多様性や重要性から、さまざまな視点から研究が行われています。たとえば都市システム、都市機能の分化、都市化と大都市圏の形成発展、都市の立地と都市景観などが、卒論のテーマにとりあげられています。

自然・環境系の地理学とは?

人間活動の舞台となる自然や環境に関する地理学分野を指すものです。一般には自然地理学といわれているもので、地形学・気候学・水文学・土壌地理学・生態学・海洋学などに分けられ、自然科学に属しています。地形学は地質学と、気候学は気象学というように関連性の強い学問がありますが、地形学・気候学・水文学などが地理学として一括されるのは、地理的空間的視点を共通にもっているからです。

今ここでは専任教員の専門分野である地形学/地生態学・気候学・水文学について説明しておきます。

地形学/地生態学とは?

地形学は地表の起状や形態を対象に、その特徴・成因・発達史などを研究する分野です。地形をつくる力は主に地球内部のマントルの動きですが、気候や植生、生態などの地表をとりまく外気の状態も地形を改変する上で大きな影響力をもっています。また現在の地形を通して古環境の変化を知ることができます。人間活動が地形に与える影響も知られています。

気候学とは?

気候学は大気地理学のことです。気候とはある地点の大気の平均状態のことをさしますが、その気候現象を研究する学問が気候学です。気候は気温や降水量などの気候要素によって表現されますが、気候要素の地理的分布に影響を及ぼす要因を気候因子といいます。緯度・海抜高度・水陸分布・地形・植生・海流などいろいろな因子が地域の気候を左右します。

水文学とは何か?

地球上のすべての水、つまり河川・湖沼・地下水・蒸発散などの由来、あり方、性質、循環、バランスなどを研究する地理学の一分野であり、陸水学と近い関係にあります。
水は人間生活と密接不可分のものだから、水利用、水利システム、地域の水収支、水経済など、幅広い調査・研究が進められています。

地誌/地域研究って何?

学問マップの地理学という大円の真ん中に「地誌」というジャンルが見えます。地誌は地理学の体系の中でどのような位置にあるでしょうか。マップでは日本地誌・世界地誌という分野を3つの系、10人の教員全員で担当することを示しています。

地理学科では、教員が自分の専門分野における地域研究の成果に立って講義をしています。その範囲は日本各地の地域研究、アジア・ヨーロッパ・オセアニア・南北アメリカなど幅広く学習できるように構成されています。

卒業論文

(提出された卒業論文題目の一部です。)

  • 北東気流吹送時の関東地方における風系と日照分布に基づく地域区分
  • 日本海斜面域における冬季気温の経年変動および永年変化と降雪率との関係
  • 東京首都圏における春・秋季の気温日較差とヒートアイランド現象の対応
  • 地域文化行事における現代的伝承形態に関する一考察 ―東京都神津島村「二十五日様」行事を事例に―
  • 神奈川県藤沢市江の島における宗教的聖地と観光地の変遷と在り方
  • 「日雇労働者の街」の形成・衰退過程とその意味 ―横浜市中区「寿地区」を事例に―
  • 内房総地域における屋敷林の示す卓越風とその構成樹種
  • 石垣島の河口の低地におけるマングローブの種別分布と塩分濃度の関係
  • 足利北部におけるスギの衰退とその分布
  • 古地図からみた小田原城下町の地域構造の変化
  • 地方自治体の観光戦略と観光イメージ ―京都府宇治市を事例として―
  • 動物の妖怪現象と地理的特徴 ―近世の世間話を事例として―
  • 地方競馬の現状と対策 ―佐賀競馬を事例に―
  • 神奈川県における清酒製造業の現状と展望
  • ため池の新たな有効利用の可能性 ―千葉県市原市を事例として―
  • 沖縄県南部におけるさとうきび生産の展開 ―糸満市喜屋武地区を事例にして―
  • 渥美半島の大規模園芸展開に伴う労働力の問題 ―堀切町の輪菊農家を事例に―
  • 愛知県田原市における個選輪菊農家の実態と市場対応
  • 荒川における流域環境変化と水質特性
  • 水環境情報とGISを活用した流域環境保全・管理に関する研究 ―阿武隈川流域における流出汚濁負荷量解析を中心に―
  • 島原半島における陸水の水質特性 ―主に地質・土地利用の観点から―
  • シモキタらしさとその表現 ―現象としてのルートマップ-
  • 在留インド人コミュニティ形成と趨勢 ―東京都江戸川区葛西地区―
  • 地理的なターゲティングによる広告活動の効率化 ―地方新聞広告と全国紙地域面広告を事例に―